〈反主人公〉と訳す。本来は16世紀のスペインに勃興した〈ピカレスク小説(悪漢小説)〉の主人公である〈ピカロ〉すなわち〈悪漢〉を指す言葉であった。〈ヒーロー〉とはもともと〈英雄〉を意味し,多くの叙事詩やロマンス物語の主人公(ヒーロー)は模範的な人物で,文字通り〈英雄〉であった。それに反してピカレスク小説の主人公は,とうてい英雄とは呼べない卑小で,ときに邪悪な人物であるから,〈反英雄〉の意味でのアンチ・ヒーローであった。20世紀,とくに第2次世界大戦後の小説ではネオ・ピカレスク小説が再評価され,伝統的な小説に見られるような,肉体,精神ともに高潔な主人公は否定され,従来の道徳基準からすればとても英雄と呼べないような人物を好んで主人公に置いた。例えばキングズリー・エーミス作《ラッキー・ジム》(1954)の主人公は,仰ぎ見るべき人間ではないが,現実に会えそうな親しみやすいアンチ・ヒーローである。
執筆者:小池 滋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
… 英語のhéro,フランス語のhérosがともに〈英雄=主人公〉を意味するとおり元来主人公とは凡俗を超えた神話的英雄であったが,それも物語の主人公たることによって英雄となりえたのである。文学の進化とともに,平凡退屈で無能な主人公が登場し,アンチ・ヒーローなどと呼ばれたが,彼らも主人公たることによって,レールモントフの言う〈現代の英雄〉たりえている。《異邦人》(カミュ)におけるように,かりに受動性の哲学を体現しているかに見えても,主人公はつねに物語を成立させる動的要素を代表するからである。…
※「アンチヒーロー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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