改訂新版 世界大百科事典 「カラクサシリス」の意味・わかりやすい解説
カラクサシリス
Syllis ramosa
多毛綱シリス科の環形動物。体側から不規則に芽をだして成長するので,全体が網目状になり,これを唐草模様にみたててこの名がある。相模湾,駿河湾,フィリピン諸島などの水深400m内外の海底に産する六放カイメン類の一種のタカツキカイメンCrateromorpha meyeriの表面にはりついているが,カイメンから栄養を得て生活しているものと思われる。体は幅0.7mmほどで鮮紅色。前口葉には3本の感触手と2対の眼点がある。体の各体節の両側にあるいぼ足には,長短の背触糸が交互に並び,長いものは28環輪,短いものは15環輪がある。剛毛は短い鉤(かぎ)状で,1剛毛束に2~3本。体節から出芽するのには,在来の2節の間に新しい節ができ,その両側に芽が現れる場合と,ある体節の背触糸がなくなって,そのあとに芽ができる2通りの方法がある。芽は尾部になってのび,その中に消化管が入りこんで肛門に開いている。珍奇な動物の一つとされる。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報