日本大百科全書(ニッポニカ) 「カークウッド」の意味・わかりやすい解説
カークウッド
かーくうっど
John Gamble Kirkwood
(1907―1959)
アメリカの物理学者、理論化学者。液体、溶液の統計力学の発展に貢献。オクラホマ州ガテボに生まれる。マサチューセッツ工科大学を卒業。1938年コーネル大学教授、1947年カリフォルニア大学教授、1951年エール大学教授。研究領域は広く、約160編の論文にまとめられている。初期の代表的成果は、1935年、液体系の分子分布関数に対する重ね合わせの近似の導入と積分方程式の導出であり、平衡系分布関数理論の出発点となった。最大の仕事は1946年以降の輸送過程に関する理論である。不可逆過程(不可逆変化)を分子運動論の立場から扱い、分布関数の系列について微積分方程式系を導き、こののち不可逆過程の統計力学は著しい発展を遂げることになる。
1934年デバイ‐ヒュッケル理論の統計力学的基礎、1938年秩序・無秩序転移、1939年有極性液体の誘電率、1941年融解の理論、1948年高分子溶液の粘性の理論、1949年表面張力の理論、1950年自由体積理論に関する批判論文、1951年溶液論などがあり、いずれも各分野の代表的な仕事になっている。
[常盤野和男]