キクイタボヤ(読み)きくいたぼや

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キクイタボヤ」の意味・わかりやすい解説

キクイタボヤ
きくいたぼや / 菊板海鞘
[学] Botryllus tuberatus

原索動物門尾索綱壁性目ボトリルス科に属する群体ボヤ。一般に厚さ2ミリメートル程度のシート状の群体をつくる。無色透明の共同外皮の中に多数の個虫がほぼ垂直に埋まる。5~7個虫が一つの共同排出孔を囲んで星形に集合するが、出水孔が直接共同外皮表面に開口する個虫が群体の一部にみられることがある。個虫は生時赤褐色を基調に多彩に彩られることが多い。各個虫は共同外皮中を網目状に密に走る被嚢(ひのう)血管で結ばれる。鰓嚢(さいのう)内の縦走血管は各側に3本、鰓孔列は4個。卵巣は腹方にあって大きな1卵を含み、精巣はその後方に位置する。日本沿岸の潮間帯から浅海に広く分布するほか、カリフォルニア沿岸や西太平洋の沿岸にも出現する。

[西川輝昭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キクイタボヤ」の意味・わかりやすい解説

キクイタボヤ
Botryllus tuberatus

脊索動物門尾索動物亜門ホヤ綱壁性目ボトリルス科。小さな個虫が星形に並んで,厚さ 1.5~2mmの膜状の群体をつくり,他物に付着する。個虫は高さ 1.5mmで,淡黄色から紫褐色まで変化に富み,透明な共同外皮中に垂直に埋っている。5~7個の個虫がそれぞれの出水孔を排出腔に開き,共同排出孔を経て外界に通じる。同一個体内に精巣と卵巣をもつ。有用性はない。近縁種にミダレキクイタボヤ B.primigenus,ウスイタボヤ B.schlosseriなどがある。日本各地の沿岸に分布し,普通にみられる。

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世界大百科事典(旧版)内のキクイタボヤの言及

【イタボヤ】より

…個虫の鰓孔(えらあな)列は9~16あるいは10~17ある。近似種にキクイタボヤ,ウスイタボヤ,ムラサキキクボヤなどがある。キクイタボヤBotryllus tuberatusは5~7個の個虫がキクの紋のように並んでおり,鰓孔列は4,ウスイタボヤBotryllus schlosseriはキクイタボヤの個虫と同様な配列であるが鰓孔列が6~10。…

※「キクイタボヤ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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