変化(読み)へんげ

精選版 日本国語大辞典 「変化」の意味・読み・例文・類語

へん‐げ【変化】

〘名〙 (「げ」は「化」の呉音)
① 神仏・天人などが仮に人間の姿になって現われること。また、そのもの。神仏の化身(けしん)。権化(ごんげ)
霊異記(810‐824)中「智者、変化の聖人を誹(そし)り妬(うらや)みて」
太平記(14C後)一二「是こそ菅烝相の変化(ヘンゲ)の神」
② 動物などが姿を変えて現われること。また、その物。化け物妖怪。変化物。
源氏(1001‐14頃)手習「きつねのへんぐしたるにくしみあらはさむとて」
③ 神変不可思議な現象
宴曲宴曲集(1296頃)四「幻夢影焔 乾闥婆城のへんげは所執の終も無し」
曾我物語(南北朝頃)一二「南無阿彌陀仏南無阿彌陀仏ととなふれば〈略〉終焉の時は、一さんいの心をへんげして」

へん‐か ‥クヮ【変化】

〘名〙
① ある性質、状態が他の性質、状態に変わること、または、変えること。へんげ。
経国集(827)二〇「陰陽之理、寔乃千端、変化之義、本非一揆
※太平記(14C後)二「洛中須臾に変化(ヘンクヮ)して、六軍翠花を警固し奉る」 〔易経‐繋辞・上〕
② 文法で、同一の語が用法に応じて語形を変えること。格変化、語尾変化など。
※小学日本文典(1874)〈田中義廉〉三「其活用毎に、各詞尾を変化するものを、四段活用の動詞といひ」
囲碁将棋で、盤上にあらわれないが、想定される打ち手、またはさし手。また、一つ着手によって必然的に生ずる幾通りかの打ち方やさし方。

へん・げる【変化】

(名詞「へんげ(変化)」の動詞化)
[1] 〘自ガ下一〙 変わる。変化する。また、化ける。妖怪になる。
※俳諧・渡奉公(1676)下「雪花の水やへんけて水仙花〈武次〉」
[2] 〘他ガ下一〙 変える。
※浄瑠璃・花屋(1634)六「花わかがししたりしを、ろうそうと身をへんけ、たすけぬるもわれぞかし」

へ‐げ【変化】

〘名〙 (「へんげ」の撥音「ん」の無表記) =へんげ(変化)
※宇津保(970‐999頃)楼上下「帝限りなく哀れにおぼされて、かつはもののへげにやとまでおぼせど」

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デジタル大辞泉 「変化」の意味・読み・例文・類語

へん‐か〔‐クワ〕【変化】

[名](スル)
ある状態や性質などが他の状態や性質に変わること。「時代の変化についていけない」「変化に富む生活」「気温が急激に変化する」
文法で、単語の語形が人称・数・などに応じて変わること。「動詞の語尾が変化する」
[類語](1変動変転変移変遷推移転化転変変性変質変換変ずる化する改まる移る移ろう動く変える化ける転化する一変する一転する様変わりする豹変ひょうへんする急変する激変する変動する移行する流転する

へん‐げ【変化】

[名](スル)
神仏などが本来の形を変えて種々の姿を現すこと。また、その現れたもの。権化ごんげ
動物などが姿を変えて現れること。また、そのもの。化け物。「妖怪ようかい変化
人がその姿・形を次々に変えること。「七変化

へ‐げ【変化】

へんげ」の撥音の無表記。
「我子の仏、―の人と申しながら」〈竹取

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普及版 字通 「変化」の読み・字形・画数・意味

【変化】へんか(くわ)

かわりあらたまる。〔易、乾、彖伝〕大なる哉(かな)、乾元、(と)りて始む。~乾して、各性命を正し大和を保合するは、乃ち利貞なり。庶物に首出して、物咸(ことごと)く(やす)し。

字通「変」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「変化」の意味・わかりやすい解説

変化
へんげ

神仏や天人などの精霊がかりに人間の姿となって現れること、またはそのものをいい、化身(けしん)、権化(ごんげ)というのも同じである。転じて、動物や植物など生命あるものが、元の姿を変えた化物(ばけもの)となって現れたり、生命のない器物が生命や心をもって現れること、あるいはその変身したもの自体をいう。「妖怪(ようかい)変化」と一つの成語として用いることが多いが、妖怪は鬼や河童(かっぱ)などのように想像上の化物や、異常な天然現象などが化物視された場合をいうと考えられるため、妖怪変化の語はすべての化物(けもつ)の総称といってよい。

[宇田敏彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「変化」の意味・わかりやすい解説

変化
へんか
change

一般に一つの存在様態から他の存在様態への移行をいう。哲学においては「生成」の意味で用いられることが多い。すべての変化は,その変化によっても変らないものとしての「実体」を前提にする。したがって,ギリシア哲学で不変の概念が発展して初めて変化が問題とされた。なかでもアナクサゴラスの体系において,変化の問題は重要な位置を占める。

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世界大百科事典(旧版)内の変化の言及

【時間】より

…世界におけるすべての変化および無変化において保持されている何ものかを時間と呼ぶ。一面から言えば,時間はまた人間と外の世界との接点に現れるものでもある。…

【化物】より

…妖怪変化(へんげ)などの怪異なものや,その出現によって引き起こされる怪異現象。江馬務は,〈妖怪は得体の知れないふしぎなもの,変化はあるものが外観的にその正体をかえたもの〉としているが,両者を明確に分けることはできない。…

※「変化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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