ケトエノール互変異性
ケトエノールごへんいせい
keto-enol tautomerism
カルボニル基に対してα位にある炭素原子に結合している水素原子が,カルボニル基の酸素原子に転位して,水酸基をもつ化合物に変化することをケトエノール転位という。このようにして生成する化合物をエノール形化合物というのに対して,もとのカルボニル化合物をケト形化合物といい,両者は互いにケトエノール異性体であるという。たとえばアセト酢酸エステルは次のようなケトエノール異性体の混合物であり,その割合は溶媒,温度などにより変化する。また,希薄なアルカリで相互変換し,一定の温度で平衡が成立する。
CH3COCH2CO2C2H5⇔CH3C(OH)=CHCO2C2H5
このようにケトエノール異性体は互いに変りうる。この現象をケトエノール互変異性という。アセト酢酸エステルの2つの異性体は低温で石英フラスコを用いて注意して蒸留することによって分離される。ケト形,エノール形の融点はそれぞれ-39℃,-78℃であり,エノール形はケト形よりはるかに速く臭素,塩化第二鉄と反応する。 (→互変異性 )
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ケト-エノール互変異性
ケトエノールゴヘンイセイ
keto-enol tautomerism
相互変換できる構造異性体間の平衡を互変異性といい,互変異性の関係にある構造異性体は互いに互変異性体(tautomer)であるという.互変異性の多くは,水素原子の結合位置が異なる互変異性体間の平衡である.その代表的な例が,アルデヒドやケトンにおける,ケト形とエノール形の間の互変異性である.この互変異性をケト-エノール互変異性という.たとえば,アセトンの水溶液中には,エノール形が0.1 ppm 程度存在する.アセチルアセトンでは,エノール形の割合は77% に及ぶ.
エノール形は,存在割合が非常に小さくても,その存在はきわめて重要である.カルボニル化合物の多くの反応は,エノール形を経由しているからである.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
改訂新版 世界大百科事典
「ケトエノール互変異性」の意味・わかりやすい解説
ケト・エノール互変異性 (ケトエノールごへんいせい)
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世界大百科事典(旧版)内のケトエノール互変異性の言及
【互変異性】より
…[構造異性]体間のエネルギー差が小さく,相互変換が原子または原子団(おもにプロトン)の移動をともなって起こるとき,これらを互変異性体といい,この現象を互変異性トートメリー,ケト・エノール互変異性などという。アセト酢酸エチルとよばれている化合物は1863年に発見されたが,この化合物の性質に関するいくつかの報告は必ずしも一致しなかった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」