サモエード語派(読み)さもえーどごは

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

北ロシアと西シベリアの北極海側一帯に住むサモエード人の言語。ウラル語族に属し、北部と南部の語群に分けられる。北方語群のネネツ(ユラク・サモエード)語はペチョラ川、オビ川、エニセイ川の河口にわたる広大な地域で2万5000人ほどに話されている。エネツ(エニセイ・サモエード)語はエニセイ川河口で100人ほどが用いている。その東方には500人ほどのガナサン人(タウギ・サモエード)が住んでいる。南方語群のセルクープ(オスチャーク・サモエード)語はオビ川の上流の2か所に居住する2000人ほどの部族に使用されている。その東方で話されていたカマス語は消滅してしまった。これら言語間の差は大きい。ネネツ語の母音は7、セルクープ語の母音は11で、ともに長短の別がある。ネネツ語wada「釣り竿(ざお)」、waada「ことば」。セルクープ語sr「雪」、sr「牛」。ネネツ語には一部完全な母音調和がみられる。to-hona「湖・に」とpe-hena「石・に」では、位置格語尾におけるh音の後ろでは、先行の母音が繰り返される。子音については、諸語の間に対応がみられる。「魚」のネネツ語hal'aとエネツ語hareにおいてはk→h、「手」のネネツ語udaとセルクープ語utmでは、語頭でゼロ→となり、「火の」のネネツ語tu-とセルクープ語のty-tでは、t→の変化がみられる。ネネツ語の名詞には単数・双数・複数の別があり、p'a「木」、p'a「木の」、p'am「木を」、p'an「木へ」、p'ahana「木に」、p'ahnad「木から」と変化する。また、har-da-m-d「君(のものになるはず)のナイフを」のような予定変化がある。-mが「を」、-dが「君の」を表す。さらに、han'ena-m「狩人(かりゅうど)で・私はあった」と名詞が時制と人称語尾をとって変化する。また動詞には瞬間動詞と継続動詞の別がある。同じ一人称単数語尾-mをとるにしても、瞬間動詞tεmta-m「私は買った」では過去を意味し、継続動詞jil'ee-m「私は生きている」では状態を表す。なお、動詞は文末にくる。vynga-na n'axar n'a jil'evy.「ツンドラに・3人の・友人が・住んでいる」となる。[小泉 保]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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