シアノ白金酸塩(読み)シアノハッキンサンエン

化学辞典 第2版 「シアノ白金酸塩」の解説

シアノ白金酸塩
シアノハッキンサンエン
cyanoplatinate

CNを配位子とする白金錯体を陰イオンとして含む錯塩総称.【】テトラシアノ白金(Ⅱ)酸塩(tetracyanoplatinate(Ⅱ)):M2[Pt (CN)4].K2[Pt(CN)4]・3H2Oは,K2[PtCl4]またはK2[PtBr4]をKCN水溶液と反応させると得られる.これとBaCl2とから,Ba塩Ba[Pt(CN)4]・H2Oが得られ,このBa塩にほかの金属の硫酸塩を作用させると各種金属塩が,また硫酸を作用させると酸がそれぞれ得られる.[Pt(CN)4]2-平面正方形で,金属塩の結晶内ではこの平面が互いに平行に積み重なり,しかも中心のPt原子が一次元的に並んでいる.Pt-C約1.99 Å,C-N約1.16 Å,Pt…Pt約3.13~3.40 Å.塩はすべて絶縁体である.塩の多くには,二色性があり,蛍光性のものが多い.酸:H2[Pt(CN)4]・2H2Oは赤色の斜方晶系の結晶で,強酸性である.塩:アルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩は水に可溶.ほかの金属塩は難溶のものが多い.Na2[Pt(CN)4]・3H2Oは三斜晶系,無色の結晶で,二色性はない.空気中で安定で,約120 ℃ で無水物になる.水,エタノールに可溶.K塩(三水和物),Ba塩(四水和物)はいずれも二色性があり,K塩は黄色と青色の,Ba塩は黄緑色と赤紫色の2形がある.Ba塩は,X線用の蛍光板などに塗布して利用される.[CAS 15004-88-3:[Pt(CN)4]2-][別用語参照]テトラシアノ白金(Ⅱ)酸バリウム不定比化合物:M2-x[Pt(CN)4],M2[Pt(CN)4]Xx.テトラシアノ白金(Ⅱ)酸のアルカリ金属塩は,酸化剤の作用や電解酸化で,Ptを部分的に酸化すると,K1.75[Pt(CN)4](陽イオン欠損型)やK2[Pt(CN)4]Br0.3・3H2O(クログマン(Krogmann)の塩.陰イオン欠損型)のような不定比化合物を生じる.これらはPt…Pt距離は3 Å 以下で,Ptの並んだ方向に電気伝導性を示し,金属的な色調を呈する.【】ヘキサシアノ白金(Ⅳ)酸塩(hexacyanoplatinate(Ⅳ)):M2[Pt (CN)6].たとえば,K2[Pt (CN)6]は,K2[Pt I6]に水溶液中で過剰のKCNを作用させると得られる.黄色の三方晶系の結晶で,正八面体型の [Pt(CN)6]2- が存在する.[CAS 41517-45-7:[Pt(CN)6]2-]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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