日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
シュトラウス(Emil Strauß)
しゅとらうす
Emil Strauß
(1866―1960)
ドイツの小説家。フライブルク、ベルリンの大学で哲学、歴史、経済学を学ぶ。1892年ブラジルに移住、農業経営と教育に従事。病を得て帰国後、フライブルク、バーデンバイラーにて文筆活動に入る。硬質な言語による簡潔にして明晰(めいせき)な表現と音楽性を秘めた文体、対位法的な構成と作品を包むユーモアゆえに、ヘッセは「ドイツ語の古典主義的作家」と評した。郷土シュワーベンに取材し、海外体験を織り込んだ『エンゲル亭の主人』(1901)、音楽的才能に恵まれた少年の悲劇を描いた『友ハイン』『生命の十字路』『ベール』『生の舞踏』を経て『三和音』(1945)に至るまで、その基本主題は「内面と外部より押し寄せる破壊的な力に耐えて、自らに忠実であれという要請」であった。世紀転換期のどの文学的潮流にも属さなかったが、純化された人間性を追究したという意味で19世紀散文の系譜を引く。
[谷口 泰]