改訂新版 世界大百科事典 「シングシング」の意味・わかりやすい解説
シングシング
singsing
南西太平洋のメラネシア,特にパプア・ニューギニアでよく使われる,主として踊りなどを指すピジン・イングリッシュ。以下のように多様な意味で用いられる。(1)踊り(しばしば饗宴を伴う)が中心になる祭りを指し,歌いながら踊るのが普通であるが,踊りにコーラスを伴うこともある。(2)呪文,歌,吟唱,儀礼的聖歌を指す。(3)体を揺り動かしたり,揺り振る動作などを指す。メラネシアの伝統社会ではシングシングはレクリエーションというより,むしろ儀礼的な意味合いが強い。部族間の交易や儀礼上の訪問,豚祭,独立後では建物の落成式,国賓の歓迎,首相の地方訪問時などに大がかりなシングシングが行われる。踊りの多くは男性が中心で,鳥の色鮮やかな羽毛で頭を飾り,黄・白・赤の顔料を顔や身体に塗る伝統的ないでたちに弓矢を携えたり,縦長の太鼓を叩いて士気を高揚させる。老人を除く部族の成人男子が参加する。他部族との競争では興奮状態になり,喧嘩口論がおきることもある。後の饗宴には全員が出る。
執筆者:畑中 幸子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報