化学辞典 第2版 「ジルコニウム化合物」の解説
ジルコニウム化合物
ジルコニウムカゴウブツ
zirconium compound
ジルコニウムは,4d25s2の電子構造に対応し,酸化状態4をとりやすく,3,2の状態もあるが,同族の TiⅢ,TiⅡに比べて不安定である.ZrⅣ化合物のうち,ZrⅣハロゲン化物はZrI4(黄色)を除いて無色.圧力下でなければ融解しない.四塩化ジルコニウムZrCl4は331 ℃ で昇華.発煙性で加水分解しやすい.酸化ジルコニウムZrO2は白色の粉末.融点2715 ℃.熱濃硫酸に徐々に溶解.2370 ℃ 以上で安定な蛍石型構造のキュービックジルコニアは人工宝石.ジルコニウム酸塩とよばれるものはオキソ酸イオンを含まない複酸化物である.錯体では六配位のほかに [ZrF7]3-,[ZrF8]4- のように七配位,八配位のものもみられる.ジルコニウム(Ⅳ)の水溶液中の化学種は,加水分解が強く起こるため明らかでない.低酸化状態のジルコニウム化合物は,四臭化ジルコニウムと水素の混合物をアルミニウム線上,450 ℃ に加熱すると臭化ジルコニウム(Ⅱ)ZrBr2,臭化ジルコニウム(Ⅲ)ZrBr3が得られる.金属ジルコニウムと四塩化ジルコニウム,または四ヨウ化ジルコニウムとの反応によっても ZrⅡおよび ZrⅢの塩化物またはヨウ化物が得られる.多くの元素と侵入型化合物をつくりやすく,ZrH2,ZrB,ZrB2,ZrC,ZrN,Zr3N4,ZrSi2,ZrP,ZrP2,ZrS2などが知られている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報