タマンシスワ(英語表記)Taman Siswa

改訂新版 世界大百科事典 「タマンシスワ」の意味・わかりやすい解説

タマン・シスワ
Taman Siswa

1922年7月,インドネシアジャワ島ジョクジャカルタで,スワルディ・スルヤニングラット(キ・ハジャル・デワントロ)を指導者として設立された民族主義的な私立学校。タマン・シスワは〈学童の園〉を意味する。ジャワ古来の寄宿塾(プサントレン)の理念に,タゴールの人間理念とモンテッソリ,フレーベルらの教育観をとりこんで設立されたが,植民地の教育制度と教育理念に対抗するものとして,各地の人々に広く受け入れられ,1930年代半ばには200以上のタマン・シスワ学校がジャワ,スマトラスラウェシ等に設立された。また,30年代の〈私学校条令〉をはじめとする植民地政庁の干渉を排除して,自主的・自立的教育機関としての立場を堅持し,その中から多くの民族指導者を生み出した。日本軍政の時代には一時閉鎖されたが,独立後は共和国政府の公教育を補うものとして復活した。スカルノ大統領の〈指導された民主主義〉の理念も,すでにタマン・シスワ学校においてその設立以来制度化されていたものであり,共和国への影響はきわめて大きかった。現在なお,幼稚園から高校に至る各種のタマン・シスワ学校が150近く各地に存続している。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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