プサントレン(その他表記)pesantren

改訂新版 世界大百科事典 「プサントレン」の意味・わかりやすい解説

プサントレン
pesantren

南タイおよび西マレーシア北部からインドネシアにかけてみられる,伝統的な住込み制のイスラム教育のための塾。ジャワではサントリ(サンスクリット起源のジャワ語で生徒,修業者の意)のいる場所という意味でプサントレンの語が用いられるが,ジャワ文化圏外では,たとえばマレーシアにおいて寄宿のための庵を意味するポンドックpondokが用いられるように,地域によって呼称は異なる。プサントレンに似た制度はすでにイスラム到来以前に成立していた。サントリとなる者は,モスクや私宅で行われる初歩のイスラム教育にあきたらず,師(キヤイまたはグル)を求めて遠方に旅し,師の近くに庵を建てて住み,師の教えを講堂で聴き,モスクで祈りをあげ,禁欲的な日常生活を過ごしながら,一種コミュニタスを形成する。学習内容や修業期間は一定の決りがなく,塾・個人ごとにかなりの差がみられ,サントリ数も20人くらいから500人以上に及ぶものまでまちまちである。寄進や内部での生産活動などによって経営が維持され,授業料はとらない。キヤイはイスラム伝統の布教者,護持者であると同時に,文化的仲介者の役割をも果たしてきた。近代的学校教育制度の普及に伴い,プサントレンは変貌を遂げつつあるが,農村部では依然強い影響力をもち,政治勢力の基盤となることもある。インドネシアだけでその数は5万ともいわれる。
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