改訂新版 世界大百科事典 「ダンケルク撤退作戦」の意味・わかりやすい解説
ダンケルク撤退作戦 (ダンケルクてったいさくせん)
第2次世界大戦初期,1940年5月27日から6月4日にかけ,ドイツ軍の猛攻下の連合軍をダンケルク付近から英仏海峡越えに,イギリス本土に撤退させた作戦。ドイツ軍は5月10日にその西部国境から攻勢を開始し,英仏連合軍主力はこれに応じ,ベルギー,オランダでこれを迎撃しようとした。しかしアルデンヌ森林地帯をひそかに前進してきたドイツ装甲部隊が,セダン付近で英仏軍の戦線を突破,西進して作戦開始10日後(5月20日)には英仏海峡に達し,英仏軍主力を海岸地域に包囲した。英仏軍は対抗措置も奏効せず,またベルギー軍が降伏していよいよ苦境に立ち,5月26日撤退(ダイナモ作戦)開始が命令された。大小のイギリス民間船を含む850隻が海峡地区に集められ,ドイツ軍の空陸からの猛攻撃下,8日間で33万8000人(うち11万2000人はフランス兵)を乗船撤退させた。困難な作戦にもかかわらず成功したことは〈ダンケルクの奇跡〉とも称せられるが,ヒトラーが5月24日装甲部隊の海岸諸港に対する突進を停止させたことに助けられた面が大きい。
執筆者:前原 透
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報