日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
チボー(Jacques Thibaud)
ちぼー
Jacques Thibaud
(1880―1953)
フランスのバイオリン奏者。ボルドー生まれ。パリ音楽院を卒業してコロンヌ管弦楽団に入り、コンサートマスターを務めたのち、独奏者として世界各地に演奏旅行。一方、ピアノのコルトーと組んだ二重奏、これにチェロのカザルスを加えた三重奏でも一世を風靡(ふうび)、楽名を高めた。技巧を重視した巨匠型の演奏ではなかったが、洗練された感覚で典雅に温かく歌い上げる点で余人の追随を許さず、とりわけ近代フランス音楽で独自の境地を示した。1943年ピアニストのマルグリット・ロンと協力して「ロン―チボー国際コンクール」を創始。わが国には第二次世界大戦前2回来日、53年(昭和28)三度目の来日の途中、彼を乗せた飛行機がアルプスに激突して墜落、73歳の生涯を閉じた。
[岩井宏之]
『J・ティボー著、粟津則雄訳『ヴァイオリンは語る』(1969・白水社)』