トゲスミクイウオ(読み)とげすみくいうお

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゲスミクイウオ」の意味・わかりやすい解説

トゲスミクイウオ
とげすみくいうお / 棘炭食魚
[学] Bathysphyraenops simplex

硬骨魚綱スズキ目クシスミクイウオ科に属する海水魚。日本では房総半島沖、駿河湾(するがわん)、熊野灘(くまのなだ)、土佐湾、東シナ海、世界では台湾南部、ニュー・カレドニアなどの西部・中部太平洋、西インド洋のほかに、アメリカのノース・カロライナ州沿岸からブラジル北部までの西大西洋にも分布する。体は細長く側扁(そくへん)し、体高は第1背びれ起部付近でもっとも高い。目は大きくて、頭長の30~40%。口は大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の中央部下付近に達する。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の隅角(ぐうかく)部の上部は顕著な鋸歯(きょし)状。主鰓蓋骨に2本の単一の棘(きょく)がある。下鰓蓋骨と間鰓蓋骨のそれぞれの下部に2本と1本の腹方に向かう鋭い棘があり、眼窩(がんか)の上縁にも2本の鋭い棘がある。鱗(うろこ)は大きい櫛鱗(しつりん)で、露出面には全体に強い小棘がある。鱗は比較的はがれやすい。側線有孔鱗数は27~32枚。背びれは2基で、両ひれは広く離れる。第1背びれは8棘、第2背びれは1棘8~10軟条からなる。臀(しり)びれは3棘7~8軟条。胸びれは伸長し、後端は臀びれの基底の後端部近くに達する。尾びれは深く二叉(にさ)する。体色は全体に暗褐色体長は約9センチメートルにしかならない小形種である。水深100~650メートルに生息する。日本ではサクラエビ漁船の引網で混獲され、また三保(みほ)半島の砂浜に打ち上げられたりする。本種は下鰓蓋骨に2本の棘があり、前鰓蓋骨の棘が明瞭(めいりょう)であることでクシスミクイウオ科の他種と区別できる。

 本種はトゲスミクイウオ属Bathysphyraenopsに属する。同属はこれまでパーシクティス科(旧スズキ科、Percichthyidae)やホタルジャコ科Acropomatidaeなどに分類されていたが、2007年にロシアの魚類学者プロコフィエフArtem Mihaylovich Prokof'evによってクシスミクイウオ属Howellaとともにクシスミクイウオ科に含められた。

[尼岡邦夫 2022年12月12日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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