翻訳|orbit
頭蓋の前面のほぼ中央部にあって,眼球およびその付属器官(視神経,外眼筋,涙腺等)を入れる1対のくぼみで,そのすきまは大量の脂肪組織によって占められている。形状は四角錐体様で,容積は約25~30mlであり,視神経管,上・下眼窩裂等の主要な開口部をもつ。これらの開口部を通じて,眼窩内に神経や血管が分布している。視神経管は視神経と眼動脈,上眼窩裂は動眼神経,滑車神経,顔面神経第一枝,外転神経と上下眼静脈,また下眼窩裂は眼窩下神経と眼窩下動脈等が通過する。なお,ヒトでは眼窩と側頭窩との間は障壁で完全に境されているが,哺乳類の多くではこの部の隔壁が不完全で,その不完全の程度が分類学上の一つの標識になる。
眼窩の周囲は骨壁でとり囲まれているため,種々の病的状態が生ずると,眼球突出exophthalmosを起こしやすい。眼窩外縁と角膜頂点間の距離を眼球突出度といい,通常ヘルテル眼球突出度計で測定される。両眼測定し,2mm以上の左右差がある場合は病的とされる。眼球突出を起こすおもな眼科的疾患としては,種々の眼窩腫瘍,眼窩内炎症,血管性病変等があり,また甲状腺機能亢進症(いわゆるバセドー病)でも起こることがある。その鑑別診断は,従来のレントゲン撮影や生検に加え,近年コンピューター断層撮影(CTスキャン)や超音波診断法の開発によって,以前より容易になってきている。治療法は原因療法で,原因になっている疾患によって異なるが,眼窩腫瘍に対する手術法としては,眼窩外縁の骨壁をはずし,腫瘍組織を切除するクレーンライン法が代表的である。さらに,悪性のものでは放射線治療も行われる。
一方,眼球が眼窩内に異常に陥没しているものを眼球陥凹enophthalmosという。眼窩の外傷としては眼窩壁骨折があり,とくに眼窩下陥骨折(ボールなどが眼球に当たったために眼窩の下壁が骨折するもので,吹抜け骨折blowout fractureともいう)が最も多い。治療は,手術で骨折および陥没した組織を整復する。また眼窩は,下側や内側で副鼻腔に隣接するため,鼻や副鼻腔の炎症などの影響も受けやすい。
執筆者:南波 久斌+藤田 恒夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
顔面を形づくっている頭蓋骨(とうがいこつ)(顔面頭蓋)が、眼球およびその付属組織(眼筋、脈管、神経、涙腺(るいせん)とその付属器、眼球周囲の眼窩脂肪組織)を収容するために形成した1対の陥凹部のことで、全体の形態は四面錐体(すいたい)形をしている。その底面は眼窩入口にあたり、先端部は後内側方向を向いている。したがって、左右両眼窩の長軸を延長すると、後頭骨内面後端の内後頭隆起の部分で交差する。眼窩後端部には視神経管がつくられている。眼窩を形成している骨壁は内側壁(鼻側)では篩骨(しこつ)、蝶形骨(ちょうけいこつ)、上顎骨(じょうがくこつ)、涙骨が関与し、上壁では前頭骨と蝶形骨の一部が関与する。下壁では上顎骨、前頭骨、口蓋骨(こうがいこつ)が関与し、外側壁(側頭側)では蝶形骨と頬骨(きょうこつ)が関与する。四面のうち、内側壁がもっとも壁が薄い。眼窩壁の上と下には、上眼窩裂および下眼窩裂という骨間隙(こつかんげき)があり、眼球に関係する神経や動静脈が出入りする。視神経管には、視神経、眼動脈が通っている。眼球の運動をつかさどる眼筋(動眼筋)の大部分は、視神経管と上眼窩裂の内側を囲む総腱輪(そうけんりん)からおこり、眼球に付着している。眼窩内側壁の前部には涙嚢窩(るいのうか)というくぼみがあり、涙嚢を入れる。涙嚢にたまった涙液は鼻涙管を通って下鼻道に出る。眼窩の容積は男子で約26.0立方センチメートル、女子で約23.0立方センチメートルとされている。
[嶋井和世]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…人工衛星を目的の最終軌道(衛星軌道orbit)に投入するまでの軌道。人工衛星として半永久的に地球を周回するためには,衛星をある程度以上(通常200km以上)の高度に運搬し,さらにある速度以上(例えば高度200kmであれば約7.8km/s以上)に加速しなければならないが,この過程が打上げ軌道である。…
…物体が運動するときに,その物体を代表する点(重心をとることが多い)が空間に描く道すじの曲線。質量mの物体が力Fを受けて運動するとき,ニュートンの運動方程式は,物体を代表する点の位置座標を(x,y,z)として,と表される。時刻t=0のときの位置と速度が与えられれば,この方程式から物体の位置が, x=f1(t),y=f2(t),z=f3(t)のように時間tの関数として求められ,各tに対する位置(x,y,z)をつなげば軌道が得られる。…
…また,脳や心臓,腎臓の病気のときにも目の症状を起こすため,〈目は脳・心・腎の鏡〉ともいわれる。
[目の構造]
ヒトの目は左右1対,頭部の中央よりやや上方,頭骨の前面にある眼窩の中にある(図2)。皮膚はここで上下の眼瞼(がんけん)いわゆる〈まぶた〉をつくっている。…
※「眼窩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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