日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネグリロ」の意味・わかりやすい解説
ネグリロ
ねぐりろ
Negrillo
アフリカの熱帯森林地帯に住む低身長の人々(ピグミー)をさす人種名。成人男子の平均身長が150センチメートル以下の人々の集団を、人類学ではピグミーという。ピグミーはアフリカと東南アジアの二地域に存在する。双方のピグミーは、低身長の狩猟採集民という点では共通しているが、種々の身体形質に違いがあり、互いに別々の系統から独立に起源したと考えられている。そのため、人種としてはアフリカのピグミーを「ネグリロ」、東南アジアのピグミーを「ネグリト」とよんで区別する。ただし、ネグリトという名称がよく用いられるにつれて、一般には「ピグミー」といえばアフリカのピグミーだけをさすようになってきており、ネグリロという名称は用いられなくなりつつある。
ネグリロは、アフリカの多様なネグロイド大人種のなかで、年間を通じて湿潤で温暖な熱帯森林という環境に適応していった人種であり、形質的には低身長でずんぐりした体躯(たいく)と、そのわりに大きな丸い頭、相対的に短くきゃしゃな下肢、薄い皮膚の色、濃い体毛、著しく広い鼻といった特徴をもつ。ネグリロの地域集団は、東西およそ2000キロメートルに及ぶ森林地帯のあちこちに、分断された形で存在するが、なかでもコンゴ民主共和国(旧ザイール)北東部のイトゥリ地方に住むムブティは、ネグリロの典型的特徴を保持している。
[丹野 正]