知恵蔵「バズワード」の解説
バズワード
コンピューター分野でのバズワードとして有名なのは、「ユビキタス」、「クラウドコンピューティング」、「Web2.0」など。こうした言葉を耳にすると、ITの新時代がやってきたという壮大な感覚を抱くが、具体的に何を指し示すのか特定されていない上、思い描くイメージも人によってまちまちだ。たとえば最近注目を集めている「クラウドコンピューティング」は、ウェブやネットワークを雲(クラウド)に見立てた、新しいIT利用のあり方を示すが、どんな形のものを、どの範囲まで入れるのか定義づけされておらず、統一した見解もない。こうした「何だかすごそうだけれど、ぼんやりとしていてよく分からない」という言葉がバズワードだとされており、時代を的確に表現する新しい造語や、商品やサービスの特徴を表すキャッチコピーとは違い、しばしば社会を混乱させるワードとして否定的にとらえられている。この他、コンピューター分野以外では、「人間力」、「複雑系」、「マルチメディア」などもバズワードだと言われている。
そもそもバズワードの「バズ(buzz)」とは、蜂のブンブンという音のことで、人を騒がせる耳障りな流行語を暗に表している。2009年夏の衆議院議員選挙で自民党の麻生太郎前首相が唱えた「責任力」も、具体性に乏しいバズワードだとされ、国民にたいしてあいまいな言葉だと批判された。
バズワードは、もっともらしい言葉が出ては消える現代社会の象徴でもあるが、使われているうちに定義が明確になり、一般的な理解が広まっていくと、バズワードではなくなり、共通認識を得た言葉として定着していく。
(高野朋美 フリーライター / 2009年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報