翻訳|catchphrase
主として新聞広告や雑誌広告などの印刷広告において,広告の受け手(オーディエンス)の注意をひき,広告本文(ボディコピー,テキスト)や商品そのものへの関心を喚起するために使われる導入句,または短い文章。アメリカの広告界で1880年代から使われ始めた言葉で,キャッチワードcatchword,キャッチラインcatchlineともいう。印刷広告においては,目だつ位置に大きな文字で示され,広告の軸となるので,現在ではヘッドラインheadlineといわれることが多い。日本では1900年代,日露戦争後に化粧品各社が中心となって,従来の説明調の広告に代えて印象表現を取り入れるようになってから使われるようになった。訳語として〈惹句(じやつく)/(ひきく)〉が当てられたこともあったが,現在ではほとんど使われていない。
キャッチフレーズは主として(1)呼びかけ機能(受け手の注意をひく),(2)選別機能(その広告にふさわしい受け手を選び出す),(3)誘導機能(関心を喚起し,広告本文あるいは商品へ導く),の機能をもつ。そのほか広告の総量が増えている現在では,商品やキャンペーンに関するなんらかの情報を伝える(4)情報伝達機能が求められている。また放送広告の出現により,複数媒体を使う広告キャンペーンが一般化したために,共通のテーマを伝える(5)標語機能を果たすことも増えている。標語(スローガン)は,圧縮表現などによりテーマ,主張を伝えるものであって,本質的にキャッチフレーズとは異なるものであったが,現在では広告スローガンや,広告キャンペーンのテーマなどの,広告で使われる個性的な表現すべてをキャッチフレーズというようになってきた。これは,放送広告での〈おさえの言葉〉やスローガンが,そのまま印刷広告のキャッチフレーズとして使われたりするようになったことから,キャッチフレーズのスローガン化が進んだとみることもできるだろう。
キャッチフレーズは,広告本文,アイ・キャッチャー(受け手の注意を喚起するための写真やイラストレーション),商品・サービス名,広告主名などとともに印刷広告を構成する。キャッチフレーズと広告本文は広告用語でコピーと呼ばれ,一般に現在の広告業では,その製作を専門職とするコピーライターcopy writerにより作られる。とりわけキャッチフレーズは,短い言葉のなかでくふうして人の心をとらえようとするので,時代を先取りした鋭い感覚や視点,おもしろい表現がなされる。その時代の雰囲気を反映し,流行語になったものも多い。
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執筆者:星野 匡
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
人の注意をひきつけるための奇抜な文句、惹句(じゃっく)。おもに広告の見出しのことをいう。広告におけるキャッチ・フレーズ(ヘッドラインともいう)は、人々がその広告に関心を抱くか否かを左右する重要な決め手であり、この一語の巧拙が広告の閲読率、ひいては商品の売上げに影響する。キャッチ・フレーズは、当然広告の本文(ボディ・コピー)を読むように誘導する役目をもつが、それだけで広告主、商品名が容易に想起され、一般消費者からのグッドウィル(好意)を獲得している成功例もある。コピーライターの腕の見せどころといえよう。なお、ヒットしたキャッチ・フレーズは流行語となり、亜流を生むが、小説や映画の題名と同様に、著作権法上の保護は薄い。
[豊田 彰]
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