ヒャッポダ(読み)ひゃっぽだ(その他表記)hundred-pacer

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒャッポダ」の意味・わかりやすい解説

ヒャッポダ
ひゃっぽだ / 百歩蛇
hundred-pacer
five-pacer
[学] Deinagkistrodon acutus

爬虫(はちゅう)綱有鱗(ゆうりん)目クサリヘビ科のヘビ。同科マムシ亜科に属する有毒種で、中国南部、海南島、台湾、インドシナ半島に分布する。全長1~1.5メートル。頭部は大きく三角形で、吻端(ふんたん)は小突起となってとがる。胴はやや太く尾が短い。体背面の各体鱗には著しく発達し竜骨突起状となった特殊な隆条があり、灰褐色または黄褐色地に暗褐色の三角形斑紋(はんもん)が並ぶ。山地の森林地帯の谷間や岩の多い丘など涼しい場所に生息し、夜行性で行動はのろい。しかし長大な毒牙(どくが)をもち毒性が強く、注入される毒量も多いためきわめて危険である。本種にかまれれば、100歩歩かないうちに倒れるというのが名の由来である。台湾のパイワン族では祖先のシンボルとされている。

[松井孝爾]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒャッポダ」の意味・わかりやすい解説

ヒャッポダ
Agkistrodon acutus; long-nosed pit-viper

トカゲ目クサリヘビ科。大型のマムシ類の1種で,体長 1.5mをこえるものもあるが,普通は 1m以下。体は太短く褐色で,黒褐色の斑紋をそなえているが,斑紋の形状には変異が大きい。尾は非常に短く,頭は大きく三角状で,吻端の鱗が長く突出してそり返っている。中国の中央部と南部,台湾およびベトナム北部に分布する。行動はのろいが,性質は荒くて攻撃もすばやい。和名は「百歩蛇」の意で,この毒ヘビに咬まれると百歩も歩けないで死ぬという言い伝えに基づいている。同じ発想で,中国ではこのヘビのことを「五歩蛇」という。

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世界大百科事典(旧版)内のヒャッポダの言及

【マムシ(蝮)】より

…クサリヘビ科マムシ属Agkistrodonに含まれる危険な毒ヘビの総称。10種が日本を含むアジア全域および北アメリカに分布する。マムシ類はハブ,ガラガラヘビなどとともに,眼の前方に赤外線に敏感なピット器官をもつ。頭部は長三角形で大型のうろこに覆われる。頸部(けいぶ)がくびれ,胴はむしろ太短く尾も短い。 ニホンマムシA.blomhoffi(イラスト)は吐噶喇(とから)海峡以北の日本に産する唯一の毒ヘビで,北海道,本州,四国,九州および伊豆七島,対馬,大隅諸島に分布し,全長40~60cm,最大75cmほどで毒ヘビとしてはむしろ小型。…

※「ヒャッポダ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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