内科学 第10版 「ビタミンB12欠乏症」の解説
ビタミンB12欠乏症(ビタミン欠乏症)
概念
ビタミンB12(コバラミン)は動物性食品にのみ含まれる補酵素で,葉酸やメチルマロン酸の代謝に関係する.悪性貧血との関連は別項を参照【⇨14-9-3)-(1)】.食事摂取不足で欠乏症が生じることはまれで,最も多い原因は吸収不良(悪性貧血,胃切除後,コルヒチン投与,膵機能不全,プロトンポンプ阻害薬などの長期服用)である.
臨床症状
悪性貧血に伴う全身倦怠感,食欲不振,動悸やHunter舌炎などに加え,脊髄の側索と後索,末梢神経および大脳病変による神経症状として四肢遠位部の針で刺すような異常感覚,しびれ感,下肢の振動覚低下,Romberg徴候陽性,下肢の脱力,失調性歩行,アキレス腱反射の消失や低下,膝蓋腱反射亢進,Babinski徴候陽性,進行例での膀胱直腸障害,意識障害,夜間譫妄,行動異常,視神経萎縮などがみられる.脊髄側索と後索に対称的にみられる病変を亜急性連合性脊髄変性症とよぶ.
診断
悪性貧血の存在(抗内因子抗体陽性,抗胃壁細胞抗体陽性),血中ビタミンB12を低値(100 pg/mL未満),尿中メチルマロン酸排泄量増加.
治療
最初の2週間はビタミンB12 を1 mg筋注し,その後は月に1回同量の筋注を継続する.神経症状が発症して3カ月以内に治療が開始されれば四肢の感覚障害などの回復はよい.しかし長期間続いた神経症状は残存する可能性がある.[中里雅光]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報