日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピリミジン系殺菌剤」の意味・わかりやすい解説
ピリミジン系殺菌剤
ぴりみじんけいさっきんざい
殺菌剤を病原菌の標的との相互作用で分けたときの分類の一つ。ピリミジン系化合物からつくられる殺菌剤で、日本では、フェリムゾンやメパニピリムが登録されている。
(1)フェリムゾン(1991年登録) 2-ピリミジニルヒドラジンを基本骨格とするフェリムゾンは、いもち病菌の細胞膜に作用し、菌糸から電解質を漏出させるが、脂質の生合成は阻害しないとされている。発芽管の伸長、菌糸の生育および胞子形成を阻害することにより、いもち病菌の感染を防御し、予防および治療効果を発揮する。また、浸透移行性が高く鞭毛菌(べんもうきん)、子嚢菌(しのうきん)および担子菌にも効果を発揮する。フェリムゾンを処理したイネの葉は、感染病斑(びょうはん)内にグリーンアイランドとよばれる特徴的な緑色部位を形成する。
(2)メパニピリム(1995年登録) アニリノピリミジンを基本骨格とする。病原菌が宿主(しゅくしゅ)植物(ウイルスの寄生対象となる植物)に侵入するために生産するペクチナーゼなどの植物細胞壁分解酵素の分泌阻害、また、胞子の発芽管伸長や付着器形成の阻害により、灰色かび病や果樹の黒星病菌の感染を防御していると考えられている。
[田村廣人]