日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ブロンデル(Maurice Blondel)
ぶろんでる
Maurice Blondel
(1861―1949)
フランスのカトリック哲学者。ディジョンに生まれる。パリの高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)卒業後、1896年エクサン・プロバンス大学に奉職。視力と聴力の衰えによって1927年引退を余儀なくされたが、その後も研究を続けて大作を発表した。1893年、学位論文「行為」を著して学界に問題の一石を投じた。これは、理性の権能を重視する大学と、啓示の重みを強調する教会のいずれの側からも大きな批判を浴びた。主著は『思惟(しい)』2巻(1934)、『至高存在と諸存在』(1935)、『行為』2巻(1936~1937)の三部作、または、それに『哲学とキリスト教精神』2巻(1944~1946)を付け加えて四部作とされる。ブロンデルは理性と信仰、内在的なものと超自然的なものとの和合を試みた思想家であり、前述の三部作でも、その中心は絶対的な存在、すなわち神と偶有的な諸存在との関連を問おうとしたもので、思惟と存在と行為との総合もその観点からなされている。
[西村嘉彦 2015年6月17日]
『片山寿昭著『モーリス・ブロンデル』(澤瀉久敬編『現代フランス哲学』所収・1968・雄渾社)』