ヘス(Victor Francis Hess)(読み)へす(英語表記)Victor Francis Hess

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ヘス(Victor Francis Hess)
へす
Victor Francis Hess
(1883―1964)

オーストリア生まれのアメリカの物理学者。グラーツ大学を卒業し、1910年同大学で学位を得たのち、ウィーン科学アカデミーのラジウム研究所でマイヤーStefan Meyer(1872―1949)の助手をつとめた。1912年軽気球を用いて一連放射線高空観測に取り組み、地球に含まれている放射性物質がおこすイオン化反応と地球の外からくる放射線のイオン化反応の違いをみいだした。これは宇宙線の諸性質を初めて明らかにしたものであり、宇宙線研究の先駆となった。1921年から1923年までアメリカでラジウム研究の指導的役割を務めたのち、1925年グラーツ大学実験物理学正教授を経て、1931年インスブルック大学教授となった。1938年ドイツ・オーストリア併合の際大学を追われ、アメリカに渡り、1956年までニューヨークのフォードハム大学物理学教授を務めた。1936年、陽電子を発見したC・D・アンダーソンとともに、「宇宙線の発見」によりノーベル物理学賞を受けた。

[小林武信]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例