ミツクリエナガチョウチンアンコウ(読み)みつくりえながちょうちんあんこう

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ミツクリエナガチョウチンアンコウ
みつくりえながちょうちんあんこう / 箕作柄長提灯鮟鱇
triplewart seadevil
[学] Cryptopsaras couesii

硬骨魚綱アンコウ目ミツクリエナガチョウチンアンコウ科に属する深海魚。土佐湾以北の太平洋、秋田県沖、九州・パラオ海嶺、南シナ海のほか、北緯64度から南緯57度の間の太平洋、インド洋大西洋に広く分布する。雌は体が卵円形で、頭上の竿は短く前方へ向かって伸びるが、その後端は体外に突出しない。ルアーは短く、先端に枝分かれをした1本の糸状突起がある。背びれの前に3個の卵形のこぶがあり、中央部のものは大きい。雌の体長は40センチメートルほどになる。雄にはルアーがない。自由遊泳時の雄は、体長3.1ミリメートルくらいでは体が丸いが、体長10.2ミリメートルほどになると体が著しく細長くなり、口の前端に歯が生え、雌に噛みついて寄生することがわかっている。口部は完全に雌の体と癒合し、ひれや尾部、目、歯、腸などは退化し、生殖腺(せん)だけがよく発達する。寄生できなかった雄は生きられない真性寄生型。水深75~4000(普通は500~1250)メートルの深海にすみ、まれに底引網に入る。

[尼岡邦夫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のミツクリエナガチョウチンアンコウの言及

【チョウチンアンコウ(提灯鮟鱇)】より

…雄は雌に比べて著しく小さく,それも種によってまちまちであるが,全長が雌の1/3ないし1/20にすぎない。ビワアンコウ,ミツクリエナガチョウチンアンコウCryptopsaras couesiなどの雄は頭部の前端で雌の腹部,尾部,頭部などの表面に癒着して一生を過ごす。このように雄が雌の体に寄生している現象は脊椎動物中で他に例がない。…

※「ミツクリエナガチョウチンアンコウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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