改訂新版 世界大百科事典 「メシュエン条約」の意味・わかりやすい解説
メシュエン条約 (メシュエンじょうやく)
1703年イギリス代表メシュエンJohn Methuenとポルトガル代表アレグレテ侯爵との間に調印された通商条約。条約はわずか3条からなり,ポルトガルが奢侈(しやし)禁止令を解いてイギリス毛織物製品の輸入を認める代償として,イギリスはポルトガルのブドウ酒をフランス産よりも1/3安い関税で輸入するというもの。この条約は,ポルトガル産ブドウ酒の輸出による対英貿易赤字の是正,イギリス船に対するポルトガルからの往路の積荷確保を目的としていた。通説では,この条約によってポルトガルはイギリス毛織物製品の独占市場となり,ポルトガル工業の衰退,対英従属の原因となったとされているが,この条約はむしろ17世紀後半から深まった対英従属の結果として締結されたものである。たしかにこの条約によって毛織物マニュファクチュアは決定的な影響を受けたが,工業全体の発展を遅らせたのは,18世紀前半大量にブラジルの金が流入して外国製品の輸入が容易になり,17世紀末に進められた工業化政策が放棄されたためである。
執筆者:金七 紀男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報