改訂新版 世界大百科事典 「モシェレス」の意味・わかりやすい解説
モシェレス
Ignaz Moscheles
生没年:1794-1870
チェコ生れのドイツのピアノ奏者,指揮者,作曲家。ウィーンでJ.G.アルブレヒツベルガーとA.サリエリに対位法や作曲を学び,ベートーベンから大きな影響を受ける。早くからピアノ奏者として認められ,1814年ベートーベンに委託されて《フィデリオ》のピアノ・スコアを出版。翌年からはドイツ各地,パリ,ロンドンにピアノのビルトゥオーソとして演奏旅行。25年ロンドンに居を定めてローヤル音楽アカデミーでピアノを教え,またフィルハーモニー協会の管弦楽団を指揮してベートーベンの《ミサ・ソレムニス》《第9交響曲》を演奏して大成功を収めた。46年ライプチヒ音楽院に招かれてピアノの首席教授となり,死の年までその職にあった。ピアノ奏者としてはM.クレメンティ,J.B.クラーマーの流れを汲み,J.N.フンメル以後の最大のピアノ奏者と称された。作品にはビルトゥオーソ的内容のもの,軽いサロン風のピアノ曲が多いが,代表作はピアノ・ソナタで,《第3ピアノ協奏曲ト短調》(1820)は今日でもしばしば演奏される。
執筆者:国安 洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報