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演奏 えんそうmusical performance

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

演奏
えんそう
musical performance

音楽を現実に音として響かせる行為。演奏は即興演奏の場合を除き,創造と享受二面性をもつ。 19世紀に作曲家と演奏家職能として分離されて以来,音楽創造の最後の仕上げとして,演奏家に「解釈」の問題が課せられ,個性的芸術創造が要求されてきた。作品と演奏の媒体としての楽譜 (記号) を,どう読み,解釈するかが演奏そのものを左右する。したがって,演奏の歴史には,演奏者の主観性,個性的魅力を主とする動きと,逆に没個性を目指す楽譜に忠実な演奏への動きの2面がみられる。演奏は単に機械的物理的な実現ではなく,音楽という芸術の創造的体験であり,常に「解釈」のうえに「表現」と「技法」の問題がからんでくる。

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デジタル大辞泉の解説

えん‐そう【演奏】

[名](スル)音楽を奏すること。「タンゴを演奏する」

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世界大百科事典 第2版の解説

えんそう【演奏】

音楽を音響を通して時間的に現実化する行為。一般に芸術活動は,創作と享受という二つの活動から成り立つが,演劇や舞踊などとともに実演芸術に区分される音楽においては,創作と享受の中間に,楽曲を音楽として時間的に実現するための演奏行為が介在する。相互に密接した関連をもつ創作―演奏―享受の行為は,西洋の近代からたがいに独立し,作曲家―演奏家―聴衆の区別が生じるようになった。西洋の中世音楽やルネサンス音楽,東洋や日本の伝統音楽においては,演奏家はしばしば作曲家を兼ね,比較的制約の少ない楽譜をもとに自由な即興演奏を行っていた。

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大辞林 第三版の解説

えんそう【演奏】

( 名 ) スル
音楽を奏すること。 「ピアノを-する」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

演奏
えんそう

音楽行動の一つで、身体あるいは楽器を使って音響を生成し、それがつくりだす意味的世界を聴き手に伝えようとする行為である。とくに楽器による演奏を、play(英語)、Spiel(ドイツ語)、jeu(フランス語)という語によって表すように、(1)規則をもつ、(2)非可逆的な時間構造をもつなどの点で、演奏は遊戯と原理的に深いかかわりをもっている。日本でも、古くは『源氏物語』に「御あそび始まりて……御箏(おんこと)ども召す」(藤裏葉(ふじのうらば))とあるように、管絃(かんげん)の技をなすことを「あそぶ」という語でとらえていた。
 演奏行為は、文化間によって、自己目的、自律的なものから、多目的、他律的なものまで、さまざまな度合いと種類をみいだすことができる。ヨーロッパでは創作―演奏―享受というコミュニケーション連関のなかで、演奏は作品の解釈行為として、おもに演奏会という場で音楽的な意義のみをもつことが多いが、他の諸地域では複合的な行動を構成する一つの要素としてとらえることができる。たとえば、インドのバウル歌唱や日本の東大寺修二会(しゅにえ)の行法では、演奏行為は同時に儀礼的あるいは宗教的行為であると考えられ、そのため舞踊的、演劇的所作もあわせもつという、多義的な行動類型の重なりのなかで、演奏は意味をもち機能している。
 一連の音楽行動のなかでも、とくに演奏は、身体との結び付きを強くもっている。それぞれの文化における演奏方法や様式は、身体とそれを取り巻く風土、環境、さらには生態的条件との相互作用の産物といえる。たとえば、マレー・ポリネシア系の人々にみられる鼻笛は、鼻からの呼気が霊気を携えているということ以上に、熱帯の環境に適応した鼻の粘膜を備えているという生理的条件が、演奏法を規定しているといえよう。また、モンゴルにおけるきわめて遠方にまで音が届く倍音唱法(ホーミー)は、生活環境である広大な草原を抜きにしては考えられない。さらに生態的条件の一つとして、楽器の材質があげられる。たとえば、竹はアジア一帯にしかみいだされず、そこから日本の尺八、中国の笙(しょう)、インドネシアのアンクルンのような独特の竹製楽器と演奏方法が生み出されている。ただ、生態的条件に規定された物質文化は楽器以外にも多くあり、人間の行動全般に広く影響を与えていることは忘れてはならない。
 演奏は身体を通して行われ、そのつど1回限りのはかないものではあるが、音楽を生きた形で打ち立て、聴き手の前に顕現させる唯一の機会である。その意味では、演奏は、音楽現象のなかでももっとも生き生きした場面であるといえよう。[中川 真]

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世界大百科事典内の演奏の言及

【音楽】より

…英語のミュージックmusic,ドイツ語のムジークMusik,フランス語のミュジックmusique,イタリア語のムージカmusicaなどの語の共通の語源とされるのは,ギリシア語の〈ムシケmousikē〉であるが,それはそもそも〈ムーサMousa〉(英語でミューズMuse)として知られる女神たちのつかさどる技芸を意味し,その中には狭義の音芸術のほか,朗誦されるものとしての詩の芸術,舞踊など,リズムによって統合される各種の時間芸術が包含されていた。このように包括的な〈音楽〉の概念は,ヨーロッパ中世においては崩壊し,それに代わって思弁的な学として〈自由七科septem artes liberales〉の中に位置づけられる〈音楽〉と演奏行為を前提として実際に鳴り響く実践的な〈音楽〉の概念が生まれたが,後者は中世からルネサンスにかけてのポリフォニー音楽の発展につれて,しだいにリズム理論,音程理論などを内部に含む精緻な音の構築物へと進化した。これらの実践的な音楽とその理論がギリシア古代から一貫して受け継いだのは,音楽的な構築の基礎を合理的に整除できる関係(ラティオratio)と数的比例(プロポルティオproportio)に求める考え方である。…

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