ユウレイイカ(読み)ゆうれいいか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユウレイイカ」の意味・わかりやすい解説

ユウレイイカ
ゆうれいいか / 幽霊烏賊
[学] Chiroteuthis picteti

軟体動物門頭足綱ユウレイイカ科のイカ。三陸沿岸から相模(さがみ)湾、駿河(するが)湾などに比較的多い。体は寒天質に富んで柔らかく、遊泳性が弱く海中にほとんど浮遊して生活していると思われる。外套(がいとう)長25センチメートルぐらいになる。ひれは丸くて小さく、外套の後端はひれを越えて延長している。頭部は細く、頸(くび)が長い。とくにドラトプシス期とよばれる幼生期は、外套膜長の2~3倍も長い。腕はいずれも弱いが、第4腕は著しく幅が広い。触腕の柄も細く長く、この上に発光器がある。触腕頭はヤナギの葉形、吸盤の柄は長い。形が変わっているので珍しがられるが、食用などの利用価値はほとんどない。

[奥谷喬司]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵mini 「ユウレイイカ」の解説

ユウレイイカ

ユウレイイカ科のイカ。水深200~600メートルの深海に生息する。主な分布域はインドネシア近海から相模湾以南の太平洋だが、日本海沿岸でも採集事例がある。細長い体でユラユラと静かに漂う姿が幽霊のように見えることから名付けられた。ひれ(エンペラ)が丸く、10本の腕のうち極端に太い腕と細い腕を2本ずつ持つことが特徴。全身が寒天質で柔らかく、眼の周りや腕から光を放つことが知られている。しかし、生きた姿が確認されることが極めて珍しいため、詳しい生態はほとんどわかっていない。2012年11月に神奈川県藤沢市江の島近海、静岡県熱海市近海で相次いで生体が採集され、同市の新江ノ島水族館で公開展示された。いずれの生体も公開から2日で死亡し、その後は標本が展示されている。

(2012-11-20)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android