リガス(英語表記)Rígas Feraíos

改訂新版 世界大百科事典 「リガス」の意味・わかりやすい解説

リガス
Rígas Feraíos
生没年:1757-98

ギリシアの啓蒙思想家,革命家。ギリシアのジャコバンともいわれ,コライスと並び称される近代ギリシア思想の創始者。テッサリア商人の家に生まれたが,その生い立ちについて詳細はわかっていない。リガスという名も彼のペンネームである。1774年イスタンブールへ出,ファナリオットのイプシランディス家の秘書となった。80年代にワラキアへ移住し,ワラキア公の秘書などを務めたが,独学で外国語や外国の思想を学び,同地のフランス領事館へも出入りして革命フランスの情報にも通じていた。90年ウィーンで初めて翻訳書を出版し,その後も啓蒙書を著した。96年ワラキアを去ってウィーンに移り,秘密結社をつくり,翌年には〈軍歌〉と〈ギリシア共和国憲法案〉を著して自ら印刷,それを携えて本国蜂起を起こすべく出発しようとしたところをトリエステで逮捕された。オーストリア官憲はオスマン帝国政府の要求をいれて彼の身柄を引き渡し,98年6月スルタンの命によりベオグラードで処刑された。彼の思想は1814年オデッサで結成された秘密結社エテリアへ引き継がれ,ギリシアのみならずバルカン諸民族の解放運動にも影響を与えた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のリガスの言及

【ギリシア】より

…そこでは商館のほかに教会や学校が建てられ,新聞が発行され,やがていろいろな結社がつくられ,祖国解放のための運動が準備された。フランス革命に共鳴した思想家コライスはパリにいたが,彼はギリシア農民の文化的向上が先決の課題であるとして啓蒙運動を唱え,ワラキアからウィーンへ赴いたリガスは秘密結社をつくり,1797年にギリシア革命のための憲法案を起草した。彼のギリシア共和国の構想によれば,それは狭義のギリシアを範囲とするものではなく,ワラキア,モルドバまでの全バルカンとアナトリアをも包含するもので,それら地域のすべての住民の共闘を呼びかけるものであった。…

※「リガス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android