リケッツ(英語表記)Howard Taylor Ricketts

改訂新版 世界大百科事典 「リケッツ」の意味・わかりやすい解説

リケッツ
Howard Taylor Ricketts
生没年:1871-1910

アメリカの微生物学者。オハイオ州に生まれ,シカゴ大学で学び,微生物学を専攻して同大学医学部助教授となる。1906年,アメリカの風土病ロッキー山紅斑熱がシラミによって媒介されることを初めて実験的に証明した。ついで10年4月にはメキシコ市で発疹熱の研究に従事し,同年5月3日,病原体による実験室内感染で最初の犠牲者となった。細菌ウイルスとの中間に位置するリケッチア属名は,彼の業績をたたえて名づけられたもの。実験動物を用いた細菌接種,同定実験の創始者でもある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のリケッツの言及

【リケッチア】より

…大きさが通常の細菌類とウイルスとの中間で,リケッチア科Rickettsiaceaeに属する一群の細胞内寄生菌。1909年H.T.リケッツがロッキー山紅斑熱の患者の血中に細菌様小体を発見し,これを報告したのがリケッチア発見の初めで,発疹熱病原体(これもリケッチア)の研究中,同病に感染して死亡したリケッツにちなんで,16年ダ・ロシャ・リーマHenrique da Rocha‐Lima(1879‐1956)によって命名された。 リケッチアは細菌とウイルスの中間の性状をもっていると長く考えられていたが,本質的には細菌の1種であり,分類学上もそのように決められている。…

【ロッキー山紅斑熱】より

…リケッチアのRickettsia rickettsiによって起こり,森林中に生息するマダニ類(Dermacentor属)の刺咬により伝播される感染症。1909年に,H.T.リケッツが,この病気からリケッチアを発見したことで知られ,最初にロッキー山地から報告されたのでこの名があるが,南北両アメリカに広く分布している。日本には存在しない。…

※「リケッツ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android