「ほっしんねつ」ともいい、発疹チフスによく似た急性伝染病であるが、症状は比較的軽く、死亡の危険もない。病原体は発疹熱リケッチアRickettsia mooseriで、イエネズミが保有し、ネズミノミによって媒介され、ほとんど全世界に分布する。日本では関東以西の各地に風土病的に存在し、流行季節は夏から秋に散発的に発生をみるが、ほかの季節に発生することもある。かつて満州チフスといわれたのも、この疾患である。
病原体を保有するネズミの血液を吸ったネズミノミが感染し、体内にリケッチアを保有し続けるとともに、リケッチアを糞(ふん)中に排泄(はいせつ)する。ネズミノミはヒトには寄生しないので、ヒトへの感染は偶然の機会にネズミノミの汚染糞が皮膚のかき傷から入ったり、あるいは、これを吸入したりしておこる。また、感染ネズミの排泄物で汚染された食物を摂取して感染する。潜伏期は6~14日。症状は悪寒とともに急に発熱し、39℃前後の熱が1週間くらい続く。また、頭痛、筋肉痛、結膜充血、吐き気などもあり、発病後3日目ごろから赤くて細かい発疹が全身にぱらぱら現れる。治療は発疹チフスと同様で、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシンなどの抗生物質がよく効く。予防には、ヒトからヒトへの感染はないとされるが、患者の病床を家族などから引き離し、ノミの駆除、ネズミの捕殺に努めるが、これらについては法律的な規制はない。
[柳下徳雄]
発疹熱リケッチアによる急性熱性感染症です。自然界ではネズミとネズミノミの間で感染サイクルが維持されており、ネズミとネズミノミが感染源になります。感染したネズミノミの排泄物が、皮膚の傷や
世界的に発生は少なくなり、国内でも報告はありませんでしたが、2003年にベトナム、2008年にインドネシアへの渡航者が感染しました。
潜伏期は1~2週間です。発熱、発疹の状況は前項の発疹チフスに類似していますが、多くの場合、症状はより軽症です。致命率は1%以下ですが、患者さんの年齢とともに高くなります。
発疹チフスと同様、リケッチアの分離には安全度レベル3以上の実験室が必要とされるため、実際には血清診断が中心となります。区別すべき疾患も発疹チフスと同様です。
発疹チフスと同じです。抗菌薬としてテトラサイクリン系薬が有効です。
ネズミノミの媒介なしに直接ヒトからヒトへ感染することはないので、ネズミおよびネズミノミの駆除が予防の第一です。
相楽 裕子
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…痘瘡(とうそう)ウイルスによって引き起こされる痘瘡(天然痘)は,熱帯地方に広範にみられた風土病であったが,世界保健機関(WHO)の取組みによって根絶された。 リケッチア類によるものには,恙虫(つつがむし)病,ロッキー山紅斑熱,発疹熱などがある。恙虫病は,広く南太平洋から東南アジアにかけて分布しており,病原体をもったツツガムシに刺されて感染する。…
…近年では抗生物質の開発,普及によって,死亡率は著しく低下した。 なお,発疹チフスによく似,しかし症状が軽い発疹熱は,かつては発疹チフスと同じものと考えられていたが,媒介はネズミノミによるものであり,病原体も別のリケッチアR.mooseriによるものであることが明らかになり,別の病気として区別されるようになった。これも抗生物質が有効である。…
※「発疹熱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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