翻訳|microbiology
微生物についての科学をいう。微生物については、広義に解釈するものから、狭義に解釈するものまでさまざまあり、その取り扱う範囲も研究者によって異なっている。微生物学の歴史的な発展をみると、まず、医学や農学など、人間に密接な関係をもつ研究から出発し、次に、基礎的分野の研究へと移行して、理学的な掘り下げが行われ、さらに、応用の領域に還元するという独特な経過をたどった。微生物学は、広義にはウイルス学、細菌学、菌類学、原生動物学などといった広範な学問分野を含み、それぞれに分類学、形態学、細胞学、生態学、遺伝学および生理・生化学の領域を包含している。また、微生物学は、基礎微生物学、応用微生物学、病原微生物学、植物病原微生物学などのジャンルに区分されることもある。応用微生物学は人間の生活に役だつ微生物を対象とする科学であり、このなかには発酵微生物学や食用・薬用微生物学がある。病原微生物学は人間や他の動物に病原性を有する微生物を対象とするもので、このなかには人獣感染微生物学、細菌性食中毒の科学を中心とした衛生微生物学、伝染病学などがあり、いずれも人間と密接な関係をもっている。植物病原微生物学は農作物、果樹や樹木の病理学を中心とした科学であるが、栽培植物に対する病原微生物学から発展して、自然界の植物全体の病原微生物学へと研究が広がっている。このほか、最近注目されているものとして、土壌微生物学および海洋微生物学などの分野がある。
[曽根田正己]
…細菌を研究対象とする科学で,微生物学の主要な部分を占めている(なお微生物学には細菌のほか酵母,カビ,原虫,ウイルスなどが研究対象に含まれている)。細菌学を微生物学の一分野としてみた場合,一般微生物学,土壌微生物学,食品微生物学,環境微生物学,微生物分類学などのそれぞれに,細菌学が含まれている。…
…生物界を動物界,植物界と二大別するのに対して,原核生物,動物,植物,菌類に四大別する考え方もあるが,菌学mycologyを植物学と別に取り扱うこともある。対象とする植物群によって,微生物学microbiology,藻類学phycology,地衣学lichenology,蘚苔類学bryology,シダ植物学pteridologyなどが区別されることがあるが,このような区分は種子植物の諸現象を対象として発達してきた植物学の枠に合わない分野を対象群ごとに解析し総合化しようとする意図にもとづくものであり,対象群の特異性を明らかにすることによって生命現象の本質の解明が期待される課題もある。しかし,現在ではむしろより単純な系で解析されることが多くなり,方法論も多岐にわたってきたので,植物分類学,植物生態学,古植物学,植物形態学,植物生理学,遺伝学,細胞学,生化学などのそれぞれの分野で,より限定されたテーマへの専門分化の傾向がある。…
…微生物を取り扱うには純粋分離,培養,無菌操作などの特有な技法があり,その結果,微生物が生物科学の研究に用いられ,最近の生物学上の重要な発見には微生物を材料として用いたものが少なくない。なお,微生物を研究対象とした科学も,農学,医学などの領域から発展し,現在では微生物学microbiologyという1分科を形成しており,細菌学はその主要な部分を占めている。【駒形 和男】。…
※「微生物学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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