日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルカ伝福音書」の意味・わかりやすい解説
ルカ伝福音書
るかでんふくいんしょ
The gospel according to Louke
『新約聖書』のなかの共観福音書の一つ。「ルカによる福音書」ともいう。「マルコ伝福音書」とイエスの語録資料(Q資料)とを利用しつつ、さらにルカLoukas特有の伝承を付け加えることによって編集された文書で、「使徒行伝(しとぎょうでん)」がこれに続く。ここでは、できごとを順序正しく述べるという意味での歴史的関心と一種の弁証的意図とに導かれて、誕生から昇天までのイエスの生涯が洗練されたギリシア語で描かれている。その際、創造からイエスのできごとを経て終末に至る世界史を、神慮に基づく救済史とみなす神学が、全体の枠組みを決定した。この福音書の記者は、医者でありパウロの伝道活動の協力者でもあったルカと同一視されてきたが、実際には紀元80~90年ごろ執筆されたこと以外には何もわかっていない。
[土屋 博]