デジタル大辞泉 「昇天」の意味・読み・例文・類語
しょう‐てん【昇天】
1 天高くのぼること。「
2 キリスト教で、イエス=キリストが復活後40日目に天にのぼったこと。転じて、人が死んでその魂が天にのぼること。「安らかに
[類語](2)死ぬ・永逝・死亡・死去・死没・長逝・永眠・往生・逝去・他界・物故・絶息・絶命・大往生・お陀仏・死する・辞世・成仏・崩御・薨去・卒去・瞑目・落命・急逝・夭折・夭逝・亡くなる・没する・果てる・眠る・
〈キリストの昇天Ascension of Christ〉をいう。復活後のキリストは数回の〈出現〉ののち,使徒たちの見ている前で天にあげられ神の右に座したとされる(《ルカによる福音書》24:50~51,《マルコによる福音書》16:19,《使徒行伝》1:9~11)。その際には,白い衣を着た2人の人が使徒たちの側に立って,キリストは〈天に上って行かれるのをあなたがたが見たのと同じ有様で,またおいでになるであろう〉(《使徒行伝》1:11)と告げる。昇天はキリスト再臨の告知を含意する。
なお,復活祭後40日目(木曜日にあたる)を昇天日Ascension Day,Holy Thursdayと呼び,ローマ・カトリック教会ではキリストの昇天を祝う。また昇天日前の3日間を昇天前祈禱日Rogation Daysという。聖母マリアの昇天は〈聖母被昇天Assumption of the Virgin〉と呼び,その祝日は8月15日。イスラムの預言者ムハンマドの昇天については〈ミーラージュ〉の項目を参照されたい。
東方美術ではつねに,大光輪に包まれたキリストが天使たちによって天に持ち上げられる,という定式で表現された(シリア語《ラブラの福音書》挿絵,586ころ)。西方ヨーロッパの美術ではより自由な異形(バリアント)が生じ,最も早い例では,キリストは雲から出ている神の手または天使により,オリーブ山Mount of Olivesの頂から天に持ち上げられる,という象徴的表現をとっている(5世紀初めの象牙二連板)。14世紀ジョットのフレスコ画(パドバ,アレーナ礼拝堂)では,自力で昇天するキリストは,旧約時代の義人たちを従えて側面から見た姿で表現されている。その下では聖母と使徒たちが,キリスト再臨の予告を伝える2人の天使の声に耳を傾けている。ときにはキリストの左右にも天使たちが飛翔する。キリストは全身像のみでなく,とくに後期ゴシック,ルネサンスの木版画(デューラーなど)では雲間から突き出た足のみが部分的に示され,それとともにオリーブ山の頂に残されたとされる二つの足跡が強調されている。
執筆者:小林 典子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
キリスト教では、肉体の死を経ることなく天に昇ることをいい、とくにイエス・キリストの昇天をさす。昇天の記事は『旧約聖書』にも(エノク、エリヤなど)みられるが、『新約聖書』に著されたイエスの昇天は、原始教会以来の重要な教義となっている。それによると(「マルコ伝福音書(ふくいんしょ)」16章19、「使徒行伝」1章9~11など)、イエスは復活後40日目に、最後の説教をしたのち、弟子たちの見ている前で「天に挙げられ、神の右に坐(ざ)した」。これは、低きものとして卑しめられ死したイエスが復活して全世界の支配者という高き位置についたことを意味し、さらにイエスを信ずる人々もまた天に入れられるであろうことへの保証ともなっている。なお、カトリック教会では、聖母マリアの被昇天Assumptionの教義を有する。
[鶴岡賀雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…この4者がその後の〈審判図〉の基本要素で,主として《マタイによる福音書》の記述によっている(19:28,24:29~31,25:31以下)。ところで,この図の上3段は〈キリスト昇天〉図にも共通で,《使徒行伝》1章11節に見られる天使の言葉によって,昇天のキリストは審判のキリストを予見せしむるというから,両者に密接な関係があるのは当然である。昇天図の下辺に,よみがえった人々(《コリント人への第1の手紙》15:52)も小さく付加して,この原始的な審判図は形成されたといえる。…
※「昇天」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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