大学事典 「ヴェサリウス」の解説
ヴェサリウス
Andreas
近代解剖学の祖とされる。ベルギーに生まれ,パリ大学のジャック・デュボワ,J.などの下で医学を学んだ後,パドヴァ大学(イタリア)で医学学位を取得して,すぐに23歳で外科学・解剖学の教授となった。7年間の勤務の後,神聖ローマ皇帝カール5世の招聘によって侍医となり,のちにはフェリペ2世の侍医ともなった。『ファブリカ』の略称で知られる著書『人体の構造について』は,初めて人体の完全にして組織的な記述をおこない,それまで正当とされてきたガレノスの論述の誤りを正した。とくに,心臓を起点とする血管を流れる血液が心房中隔を通過しないことを指摘したことはよく知られている。アヴェロエス主義と呼ばれる自然学研究が盛んであったパドヴァ大学では医学研究が隆盛し,のちに血液循環を発見するハーヴェイ,W.も同大学で学んだように,近代医学揺籃の地となった。
著者: 児玉善仁
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報