大学事典 「パドヴァ大学」の解説
パドヴァ大学［イタリア］
パドヴァだいがく
パドヴァにある国立総合大学で，1222年にボローニャ大学（イタリア）からの学生・教師の集団移住によって成立したとされる。都市と君主の保護の下に繁栄し，1363年には神学部が創設され，99年には法学部から医学・教養諸学部が独立した。1405年以降ヴェネツィアの支配下に置かれて，自由で世俗的な雰囲気を獲得してからは，医学や自然学の分野でヨーロッパ随一の名声を博した。パドヴァ医学は，スコラ的医学と異なった経験的方法を確立して，疫学，病理学や，オランダのライデン大学に影響を与える臨床医学，ヴェサリウスをもつに至る外科学・解剖学などの分野で急速な発達を遂げ，近代医学の成立に貢献した。15世紀から17世紀までの黄金時代には，この名声にひかれてイタリアはもとよりヨーロッパ各地から多数の学生が参集した。コペルニクス，W. ハーヴェイ，W.などもここに学び，ガリレオ・ガリレイをはじめとする多くの著名人が教授した。世界最初の試みとして，1543年に医学臨床実習のための講座，45年に薬草植物園，94年に円形階段状の解剖学教室が創設され，1629年にはイタリア初の大学図書館付属図書館が設立された。
18世紀には，成立以来学生が保持した自治権の教師への委譲，新講座の設立などの改革が行われたが，ヴェネツィアの疲弊に伴って大学も衰退した。1797年のヴェネツィア共和国の崩壊以後，大学の伝統的組織機能は払拭され，イタリア統一以後近代的な大学として再生した。2015年には8スクオーラ，32学科，教員数2057人，2015/16年の登録学生数約5万9000人。
著者: 児玉善仁
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報