一厘事件(読み)いちりんじけん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一厘事件」の意味・わかりやすい解説

一厘事件
いちりんじけん

たばこ耕作者である被告人が,旧たばこ専売法により政府に納付すべき葉たばこ7分 (2.6g) ,価格にして1厘のものを手刻みにして消費し,同法違反に問われた事件大審院は 1910年 10月 11日,原審の有罪判決をくつがえし,無罪を言い渡した。大審院は,刑罰法規の解釈は単に物理学上の観念だけによらず社会共同生活上の観念を標準とすべきで,零細な違法行為は,犯人に危険性があると認められる特殊な場合でないかぎり不可罰とすべきであるとしたのである。この判決は今日の可罰的違法性理論原点であるとされている。

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世界大百科事典(旧版)内の一厘事件の言及

【可罰的違法性】より

…処罰に値する程度の実質的な違法性。日本において,宮本英脩が価額1厘の葉タバコを耕作者が勝手に消費した行為を不可罰とした一厘事件判決(1910)を手がかりに提唱した考え方で,具体的には,行為がたとえ法規に違反し,形式上違法ではあっても,それが軽微であれば不可罰であるとする。第2次大戦後は,主として公安・労働事件の判例で用いられ,多くの無罪判決を生んだ。…

※「一厘事件」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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