処罰に値する程度の実質的な違法性。日本において,宮本英脩が価額1厘の葉タバコを耕作者が勝手に消費した行為を不可罰とした一厘事件判決(1910)を手がかりに提唱した考え方で,具体的には,行為がたとえ法規に違反し,形式上違法ではあっても,それが軽微であれば不可罰であるとする。第2次大戦後は,主として公安・労働事件の判例で用いられ,多くの無罪判決を生んだ。また,公務員等,争議を禁じられた者の争議行為が刑法に触れた場合についても,多数説は,当該行為は争議禁止違反という違法なものではあっても,公務員等の労働基本権を考慮して,可罰的違法性を欠き無罪となる場合を認める。ただ最近の最高裁は,可罰的違法性論にきわめて消極的である。もっとも判例も,従来からごく軽微な法益侵害はそもそも犯罪構成要件には該当しないとし,正当化事由の有無の判断に際しても,処罰に値するか否かを考慮して非常識な結論を回避しようとしてきた。その意味で,違法だが可罰的違法性を欠くとするか,そもそも違法性がないとするかを争う意味は少なく,処罰に値する行為に限定するという実質的な解釈を実際に認めるか否かが決定的であるといえよう。
→違法性
執筆者:前田 雅英
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…この事由を違法性阻却(正当化)事由という。
[刑法]
刑法上の違法行為には刑罰という厳しい制裁が加えられるため,他の法領域とは異質の違法性が要求される(可罰的違法性)。そして,どのような行為が刑法上違法であるかは,あらかじめ国民の前に明示されねばならない(罪刑法定主義)。…
※「可罰的違法性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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