精選版 日本国語大辞典 「一往」の意味・読み・例文・類語
いち‐おう‥ワウ【一往・一応オウ】
- 〘 名詞 〙 ( 元来「一往」であるが、のちに「一応」とも書かれるようになった。②③は副詞的にも用いる )
- ① 一度行くこと。一度行なうこと。
- [初出の実例]「況や一往の新賓なれば感思をさへがたし」(出典:海道記(1223頃)序)
- [その他の文献]〔李白‐古風詩〕
- ② 十分とはいえないが、ひととおり。細かい点はおいて、ひとわたり。とおり一ぺん。大略。ひとまず。仮に。
- [初出の実例]「天長五年七月一日一往聴了」(出典:聖語蔵本成実論天長五年点(828)巻十四識語)
- 「前の重々の訴陳は一往さもときこゆ」(出典:貞享版沙石集(1283)三)
- [その他の文献]〔宋書‐孔琳之伝論〕
- ③ 一度。一回。
一往の語誌
( 1 )漢語「一応(いちおう)」は、「あらゆる・すべての・いっさいの」という意の中国近世語であり、「一往(いちわう)」とは本来は別語。近代に至って、広く「一応」の表記が見られるようになった。
( 2 )現代語では、②からの派生として、「僕は一応大学生です」「博士論文は一応書いたのですが」などのように、高い位置づけを持つと一般的に考えられていることがらに対して、「一応」を用いて、謙譲的なニュアンスを持つ用法も見られる。