中国、南朝宋一代の紀伝体の歴史書。正史の一つ。100巻からなる。著名の文人沈約(しんやく)(441―513)が487年、南斉(せい)武帝の勅命を奉じて編纂(へんさん)、本紀10巻と列伝60巻は先行の稿本を基にわずか1年で完成したが、志30巻の稿了には十数年を費やした。父の沈璞(しんはく)を殺した孝武帝とその功臣に悪口を書き連ねるなど、古来、曲筆が批判されている。しかし、人物、事柄の個別性、ものごとの豊饒(ほうじょう)さを重んじた南朝貴族の精神を反映して叙述は詳細で、詔勅、上奏文、私信、文学作品を数多く採録し、また志は、諸制度の変遷を漢や三国時代にさかのぼって跡づけていて、貴重である。ただ唐以降、簡潔な歴史叙述が尊ばれると、李延寿(りえんじゅ)『南史』、司馬光『資治通鑑(しじつがん)』の出現もあってあまり読まれなくなり、一部が散逸した。夷蛮(いばん)伝の倭国(わこく)の条に倭五王の記事がある。
[安田二郎]
中国南朝の宋(420~479)の興亡を扱う正史。100巻。沈約(しんやく)撰。487年撰修開始,502年梁朝成立後定稿。ただし,439年以来の撰修事業を継承修訂。「史記」以来の体裁によるが本紀・志・列伝のみ。同じころ別撰の宋史書5種は散逸。夷蛮倭国伝には,倭の五王讃・珍・済・興・武の記述があり,各代の遣使と珍以下に対する倭王への叙任が記されている。中華書局刊。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…南斉の永明時代(483‐493)には竟陵王蕭子良(しようしりよう)のサロンに集って,〈永明体〉とよばれる詩風の旗手となり,そこで知りあった蕭衍(しようえん)(梁の武帝)がやがて梁王朝を創業すると,尚書令に進んで官界に重きをなし,文学界,思想界ににらみをきかせた。《宋書》100巻の著作のほか,その詩文は《文選》などに,仏教に関する思想論文は《広弘明集(こうぐみようしゆう)》などに採られて多数が伝わる。〈四声〉の理論の発見とその詩学への応用も彼の功績に帰せられ,空海の《文鏡秘府論》にも影響がみとめられる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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