日本大百科全書(ニッポニカ) 「七死刑囚物語」の意味・わかりやすい解説
七死刑囚物語
しちしけいしゅうものがたり
Рассказ о семи повешенных/Rasskaz o semi poveshennïh
ロシアの作家アンドレーエフの長編小説。1908年5月、文集『野ばら』に発表された。その年2月の司法大臣暗殺未遂事件(二重スパイ、アゼフの密告によって事前に発覚、テロリストは逮捕された)に材をとり、5人のテロリスト(うち女2人)に殺人犯の農民と泥棒を加えた7人の、死刑宣告から刑執行に至るまでの心理、生理、肉体の状態が克明に描かれている。もちろん、そのヒロイズム、雄々しさへの称揚はあるが、注目すべきは、生と死の間(あわい)での死刑囚の気持ちが、肉体の異物化とか心臓の鼓動と混ざり合う幻聴などの、肉体、生理の状態として描かれていることである。数年内に多数の外国語訳が出た。
[小平 武]
『小平武訳『七死刑囚物語』(1975・河出書房新社)』