三代目襲名(読み)さんだいめしゅうめい

改訂新版 世界大百科事典 「三代目襲名」の意味・わかりやすい解説

三代目襲名 (さんだいめしゅうめい)

1960年代に一世をふうびした東映やくざ映画の中の最高傑作の一つで,正式題名は《明治俠客伝・三代目襲名》(1965)。監督は加藤泰。原作は紙屋五平で,脚本は村尾昭,鈴木則文による。やくざ一家の三代目を継いだ男が,渡世上の義理ゆえに薄幸の女郎との愛を断念し,明治の近代化の波の中,やくざ稼業と堅気の土木業とのはざまで苦悩にまみれ,忍耐のあげく敵陣に殴り込むまでを描く。やくざ渡世の掟と愛との相克,ラストの殴り込みは,多くのやくざ映画に共通するパターンであるが,加藤泰一流のローアングルに固定したカメラワークのもと,画面がつねに緊迫した美しさにあふれ,男と女の関係の惨劇を格調高く描く中で,逆説的に愛の想念をうたい上げている。その意味では,メロドラマの傑作でもあるといっていい。川べりで女郎が主人公に故郷のみやげの桃を手渡すシーンは,名場面として名高い。主人公には鶴田浩二が扮して名演を見せ,女郎役の藤純子はこの作品で注目されて東映やくざ映画の名花となっていった。なお,これとは別に,現実のやくざ組織である山口組の三代目をモデルにした小沢茂弘監督・高倉健主演《三代目襲名》(1974)が,東映やくざ映画の末期につくられた。
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