改訂新版 世界大百科事典 「三春人形」の意味・わかりやすい解説
三春人形 (みはるにんぎょう)
福島県郡山市西田町高柴および田村郡三春町で製作されている張子人形。伝統的な郷土玩具類の代表的な人形として知られる。江戸時代正徳・享保(1711-36)のころまでは三春藩領の高柴付近で子ども相手のデク,デコと呼ぶ張子玩具がつくられていたという。当時,安達郡川崎村が和紙の産地であったのが三春人形発達の要因になった。三春藩主秋田倩季(よしすえ)が,農閑期の副業奨励のため江戸の人形師を招き領内の高柴に〈デコ屋敷〉を与えて張子人形製作の技法を農民に修得させたのが始まりという。人形の種類は歌舞伎,浮世絵風俗ものが多く,春駒,子連れ,天神や張面,だるまなどがある。往年の木型約2000個が残されていて,一部は同県文化財に指定されている。木型の材料にはヤマヤナギが用いられ,張子紙はコウゾを原料とした筋塵紙(すじちりがみ)と呼ぶ和紙を使っている。
執筆者:斎藤 良輔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報