日本大百科全書(ニッポニカ) 「上原專祿」の意味・わかりやすい解説
上原專祿
うえはらせんろく
(1899―1975)
歴史学者。京都市に生まれる。東京高等商業学校で文明史家三浦新七(1877―1947)に師事する。同校卒業の年から2年間ウィーン大学に留学、経済史家ドープシュの演習で原史料中心の厳格な歴史研究の方法を体得した。帰国後、高岡高等商業学校を経て、母校の後身東京商科大学に付属商学専門部教授として迎えられ、西洋中世経済史の高度に実証的な研究に没頭した。その成果が『独逸(ドイツ)中世史研究』『独逸中世の社会と経済』である。第二次世界大戦後の学制改革期に学長に選出され、東京商科大学から一橋大学への脱皮のために貢献したほか、日本の大学全体の民主化と人文化に努力した。この時期『大学論』『歴史的省察の新対象』などを公刊した。学長辞任後は時代の流れに抗して平和運動に挺身(ていしん)、また新しい世界史像の形成のために苦闘した。この時期の著作には『世界史像の新形成』『歴史学序説』などがある。晩年は京都南郊に隠栖(いんせい)、『死者・生者』『クレタの壺(つぼ)』をまとめた。
[佐々木克巳]
『『クレタの壺』(1975・評論社)』