僧沢庵(たくあん)(1573―1645)の著。一巻。禅の立場から兵法(剣術)における、とくに勝負に臨む心の持ち方や置きどころについて、いわゆる不動智を中心に解説した心法書。この書はもと将軍への上書で、書名はなく、その成立年代は1636年(寛永13)の9月、沢庵は一夕、家光(いえみつ)に召し出されて、柳生宗矩(やぎゅうむねのり)、鍋島直能(なべしまなおよし)の同席のもと、兵法に関して談じ合ったが、このときの談義につき沢庵の返答という形で一冊にまとめたのがこの書である。宗矩に与えられた1本は、兵法書に簡約・改編されて『不動智』の名で門人に授与された。1779年(安永8)、京都の書林から仮名法語(かなほうご)の一冊として板行され、一般の人々にも愛読された。
[渡邉一郎]
…32年赦免され,その後はかえって将軍家光の帰依をうけた。柳生宗矩のため《不動智神妙録》を書き与え,柳生の剣法の大成にも大きな影響を与えた。晩年,家光の外護(げご)で品川東海寺を開創,73年の生涯をここで閉じた。…
※「不動智神妙録」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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