両面感情(読み)りょうめんかんじょう(その他表記)ambivalence 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「両面感情」の意味・わかりやすい解説

両面感情
りょうめんかんじょう
ambivalence 英語
Ambivalenz ドイツ語
ambivalence フランス語

スイスの精神医学者ブロイラーによって使用された(1910)概念で、両面価値ともいわれている。一般に、ある対象に対して相反する感情を同時にもつことをいう。ブロイラーは意志思考、感情の三つの面について両面感情の生じることを指摘したが、のちにはフロイトの精神分析学の重要な概念として普及するようになった。フロイトによれば、患者は治療者に対して、感情反応を引き起こし、親や恋人と同一視することがある。そのとき、愛情尊敬の感情表明があれば陽性転移といい、逆に敵意やねたみの感情をもつときは陰性転移といった。神経症ではこの両感情の転移が同時に生じるという。俗に、相反する感情が生じて葛藤(かっとう)を引き起こし、どちらとも決めがたいときに、アンビバレンスといっている。

[本明 寛]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android