アンビバレンス(その他表記)ambivalence

翻訳|ambivalence

精選版 日本国語大辞典 「アンビバレンス」の意味・読み・例文・類語

アンビバレンス

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] ambivalence ) 同じ対象について全く相反した感情が共存していることをさす心理学用語。好悪併存。両面価値。

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改訂新版 世界大百科事典 「アンビバレンス」の意味・わかりやすい解説

アンビバレンス
ambivalence

同一の対象に対して相反する感情,とくに愛と憎しみが同時に存在している状態。両価性と訳される。このような状態を統合失調症のおもな症状と考えたブロイラー造語で,S.フロイトが借用し,必ずしも病的でない,さまざまな現象の説明に用いた。日本にも〈かわいさ余って憎さ百倍〉ということわざがあるが,われわれはある人を愛しているとき,意識しているにせよいないにせよ,同時に憎しみをももっているものである。たとえば,愛する人が死んだとき,われわれは自分を責めるものだが,それは他方ではその人を憎んでいて,その死を願っていたため,あたかも自分が殺したかのように感じるからである。嫉妬もアンビバレンスの表れである。もし愛しか存在していないなら,恋人が別の人に走っても,その幸福を願うはずだから。このような自責や嫉妬は一応正常のうちに入れてもいいが,恐怖症や強迫神経症などの症状は,アンビバレンスを解決しようとする失敗した試みと考えられる。たとえば動物恐怖は,父親なら父親に対する憎しみを抑圧してある種の動物に振り向け,その動物の復讐を恐れているのである。アンビバレンスのそもそもの根源は,われわれ人間にとって最初の愛情対象である親が,われわれを養い育ててくれる人であると同時にわれわれの多く可能性を禁止し挫折させる人でもあるということにある。その意味において,アンビバレンスは人間の宿命であるとは言えないまでも,容易には克服できない状態である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アンビバレンス」の意味・わかりやすい解説

アンビバレンス
ambivalence

愛憎感情。個人の感情,志向において対立した方向性を同時に含む場合に用いられる。「両向性」「相反性」「両 (二) 面価値」などと訳されているが,定訳はない。ドイツ語の Ambivalenzに由来し,E.ブロイラーが創始した用語であるといわれている。 S.フロイトは本能が相反する傾向を同時にもつことを主張したが,その例としては,サディズムマゾヒズムがあげられる。

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