ブロイラー(読み)ぶろいらー(英語表記)Eugen Bleuler

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブロイラー」の意味・わかりやすい解説

ブロイラー(若鶏)
ぶろいらー
broiler

ブロイラーということばは、肉用の若鶏を意味する用語として、19世紀からアメリカですでに使用されていた。ブロイラーの生産も、小規模ながら、ニュー・ジャージー、デラウェアメリーランドなど、アメリカ東部の諸州で1880年ごろから始められていたといわれるが、1920年代にはデラウェア、ニュー・ハンプシャー、ジョージアなどの諸州で大規模なブロイラー生産が産業として成立する。第二次世界大戦中、アメリカでは軍用食料としてブロイラーが大量に買い付けられ、これによってブロイラーの生産は大いに伸展したのである。

 第二次世界大戦後、アメリカでは、ブロイラー専用鶏種の改良、各種予防治療薬の開発、ブロイラー用配合飼料の研究、大羽数飼育設備および処理加工設備の開発が進み、ブロイラーが安全・安価・大量に供給されるようになり、これがスーパーマーケットによる大量流通・大量販売および外食産業発達と結び付いて、ブロイラー産業は驚異的な発展を遂げた。アメリカでの1人当り年間の食肉消費は、牛肉豚肉が減少傾向であるのに対して、ブロイラーを主とする家禽(かきん)肉の伸長が著しい。

 このようにアメリカで大発展したブロイラー産業は、1950年ごろから全世界に拡大し、日本でも、当時は皆無に等しかったブロイラーが、1986年(昭和61)には年間7億4000万羽近く、1997年(平成9)には5億9000万羽近くも生産され、食肉消費量の3分の1を占めるに至った。

 ブロイラーは、世界各国とも同じ鶏種、同じ飼料配合内容、同じ飼育方式で生産されているが、鶏肉の料理法は国によって異なるから、ブロイラーのマーケット・サイズ(出荷するときの生体重)も国によって異なる。たとえば、フライを主とするアメリカでは1.9キログラム前後、煮込み料理の多い南欧やイギリスでは2キログラム前後、焙焼(あぶりやき)の多い北欧や中近東諸国では1.5キログラム前後、骨なし鶏肉(正肉)を調理する日本では2.7キログラム前後となっている。体重が大きくなるほど出荷までの飼育日数が長くなるが、もっとも体重が大きい日本の場合でもブロイラーは55日齢前後で出荷され、飼料消費量は生体重の約2倍である。

 このように短期間できわめて効率よく大量生産されるブロイラーは、もっとも安価な食肉であり、宗教的禁忌がないことや低カロリー高タンパク志向も手伝って、全世界的にもっとも重要な動物性タンパク食品となっている。

駒井 亨]

『駒井亨著『食鶏の規格と流通』(1974・養賢堂)』『駒井亨・麻生和衛・小野浩臣共著『新著・ブロイラー――食鶏の生産技術と経営』(1978・養賢堂)』『社団法人日本食鳥協会編・刊『鶏肉のすべて』(1994)』


ブロイラー(Eugen Bleuler)
ぶろいらー
Eugen Bleuler
(1857―1939)

スイスの精神医学者。チューリヒの近郊に生まれる。チューリヒ、ベルンミュンヘンの大学に学び、1883年医学の学位をとる。1898年から1927年までチューリヒ大学の精神医学の教授でブルクヘルツリ精神科病院の院長を兼ねる。初めブントの心理学の影響を受けるが、のちにユングの協力のもとでフロイトの精神分析を取り入れ、研究グループをつくり、精神病を新しい角度から研究する。従来のクレペリンの早発性痴呆(ちほう)にとってかわってスキゾフレニアschizophrenia(統合失調症)という用語によって、この病気のもつ特性を明らかにした。診断のための基本的症状として、自閉性、連想障害、両価性、感情障害に注目する。朝早くから夜遅くまで病棟にとどまり患者と生活をともにした人であり、ブルクヘルツリの研究グループに参加した人たちに大きな影響を与え、精神分析的研究の発展に多大の貢献をした。

[外林大作・川幡政道]

『オイゲン・ブロイラー著、人見一彦監訳、向井泰二郎・笹野京子訳『精神分裂病の概念――精神医学論文集』(1998・学樹書院)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブロイラー」の意味・わかりやすい解説

ブロイラー
Bleuler, Eugen

[生]1857.4.30. チューリヒ近郊ツォリコン
[没]1939.7.15. チューリヒ近郊ツォリコン
スイスの精神医学者。チューリヒ大学教授。ウィルヘルム・ブントの実験的アプローチとジグムント・フロイトの精神分析との融合を試み,その立場は連合心理学的であった。早発性痴呆症 (→早発痴呆 ) に代わって統合失調症という概念を初めて導入し,またパラノイアにおける自閉的思考の役割などを研究した。主著『早発性痴呆または精神分裂病群』 Dementia Praecox oder Gruppe der Schizophrenien (1911) ,『精神医学概論』 Lehrbuch der Psychiatrie (1916) 。

ブロイラー
broiler

肉用鶏の一種。語源はアメリカで肉用鶏をロースター (大型) ,フライヤー (中型) ,ブロイラー (小型) と分類したところからきているが,現在では肉用鶏の一種の呼称となり,第2次世界大戦後,日本でも広く普及している。在来の肉用鶏の品種は産卵能力が劣り,雛の生産費が高くつく欠陥があって,副業的な小規模経営にすぎなかったが,近年は改良や合理化により大規模化が進んだ。ブロイラーは小型で,じか焼用に適し,2ヵ月程度で体重は 1350gぐらいになり,生産費の安いのが特徴。日本での肉用鶏の生産は 1979年には 65年の 6.9倍に達している。 91年の飼養戸数約 5083戸で,生産数は約1億 4274万羽。

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